以前アップした介護施設・デイサービスのマネジメント①【スタッフの定着率向上】というコラムで、介護施設・デイサービスにおける主なマネジメントがスタッフの定着率の向上であることを解説しました。
スタッフの定着率には、彼らが働く職場環境の良し悪しが大きく影響します。
では、どうすれば、良い職場環境を作ることができるのでしょうか?
利便性を上げるために施設の設備を改装してグレードアップしたり、福利厚生を充実させたり、お金に糸目をつけないのであれば、職場環境を改善する方法は多様に存在するでしょう。
しかし、コストのかかる方法を即時決断し、実行に移すというのは、中々難しいところ。
そこで、今回は、経営者自身がすぐ実行できることに絞って、紹介いたします。
なぜ『良い職場環境づくり』が大切なのか
良い職場環境を作るために経営者ができることとは何か、その具体的な方法を知る前に、なぜ、良い職場環境を作らなければいけないのか、改めて考えてみましょう。
「そりゃ、悪い環境より良い環境で働けた方が誰だって嬉しいからでしょ?」と思われたのではないでしょうか?————全くその通りです。
ただ、少しおおざっぱすぎるので、もうちょっとだけ掘り下げてみます。
冒頭にもあったとおり、介護施設・デイサービスにおいて、スタッフの定着率は、非常に重要です。
スタッフが退職してしまうと、引継ぎの手間や新たな人材確保に要するコストなど、施設に少なくない損失が発生します。
他のスタッフのモチベーションが下がってしまうというデメリットもあります。
抜けた穴を補うためのしわ寄せで他のスタッフに負担がかかるでしょうし、退職するスタッフが慕われている存在だったのなら、いなくなるという事実で気落ちする人もいるでしょう。
スタッフが退職する理由は様々です。中には、どうしようもない理由もあります。
しかし、施設側にもし問題があるのであれば、ただちに改善しなくてはいけません。
結論、スタッフの定着率を向上させるために、経営者は、職場環境を良くする必要があるのです。
現場を知る
現場に無関心な経営者をスタッフは、尊敬できません。
現場に無知で頼りない経営者の元でスタッフは、働きたいと思えません。
現場に立って初めて、働くスタッフの考えや悩みを理解することができるのです。
他業種からの参入が多いという理由からか、実際に介護した経験のない経営者様が多いように感じます。
介護施設・デイサービス以外でも、現場を経験した人間が、統率するリーダーや管理するマネージャーになるのは珍しいことではありません。
もちろん、現場の経験があるなしが、リーダーやマネージャーの適正を判断する全てではありません。
ただ、現場で起こった問題や部下の悩みを正しく理解する上で、有用であることに疑いの余地はないでしょう。
職場環境を良くするという今回の議題を抜きにしても、現場で体感したことが、経営時のヒントとなることも少なくないハズです。
スタッフから不満や悩みを抽出する
ご存知のとおり、高齢者向けの介護サービスは、心身共に負担がかかる大変なお仕事です。
ですが、ネガティブな理由の場合、スタッフが、突如思い立って退職にいきつくというのは、あまりありません。
大抵、1つの小さな悩みが大きくなったり、別種の悩みがたくさん積み重なって、退職という形になってしまったということがほとんどです。
こうした小さな悩みは、経営者が、個人的に話を聞く時間を定期的に設けることで、察知することができます。
この時、注意すべき重要なポイントが2つあります。
1つは、『定期的に実施する』こと。
表面上ではなく、スタッフの本音を聞き出すことに意味があります。
ただし、一度で全てのスタッフの真意を聞き出すのは難しいでしょう。
定期的に相談をうけることで、距離を近づけつつ、本音を引き出すことが肝要です。
どうすればスタッフから本音を引き出すことができるのかを考慮した上で、事前に質問内容を考えておきましょう。
2つ目は、『聞くだけで終わらない』こと。
当たり前のことですが、聞き出した問題を聞くだけで放置していては無意味です。
相談にのっても、結局、何もしないようではスタッフからの心象も悪くなり、逆効果です。
何らかの改善策を講じ、実行してください。
問題の抽出と改善。これを繰り返すことで、自然とスタッフの働きやすい職場が構築され、比例して離職率も低下することでしょう。
態度や言動を改める
日頃からスタッフへ感謝を伝えていますか?
些細なことですぐ苛立ったりしていませんか?
経営者の言動や態度によっては、スタッフのモチベーションを下げてしまうことがあります。
逆もしかりで、モチベーション向上させる要因にもなり得ます。
前項で、『定期的にスタッフ個人から話を聞く』ことを推奨しましたが、この時は、必ずスタッフへ『いつもありがとう!』と言ってください。
面と向かって、1対1で伝えることが重要です。
スタッフは経営者を見本にしています。
経営者の言動や態度が悪いとスタッフたちにそれが伝播して、どんどん施設の雰囲気が悪化しまうでしょう。
スタッフたちのモチベーションだけでなく、必然的に施設の提供するサービスの質も下がります。
気持ちよく働いてもらえるよう、スタッフとの接し方に気を付けてください。
とはいえ、経営者も人間ですから、上辺だけのコミュニケーションを続けるのは限界がありますし、スタッフも表面上の感謝やねぎらいは、すぐに気が付きます。
相手を好きになり、偽りない感謝を持つことが重要です。
また、スタッフへ気遣いすぎて、消極的になりすぎないようにも注意してください。
経営者とスタッフが真に対等な立場にあって、始めて良い職場環境を構築することができます。
まとめ
何度も繰り返しになりますが、『スタッフの定着率向上』は介護施設・デイサービスにおいて非常に重要な課題です。
定着率を向上させるには、職場環境を良くしていかなければなりません。
そのためには、経営者自らスタッフの声に耳を傾け、積極的に問題を改善していく必要があります。
福利厚生に力を入れたり、施設の設備を強化するのも重要ですが、経営者の姿勢がスタッフにとって好ましいものであることの方が、よほど重要であり、かつすぐに改善できる部分なのです。
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